LLM仕様レビュー比較――結論と実務での使い方
1. この実験で確認したこと
同じ銀行システム仕様、同じ正本資料、同じレビュー指示を16件のLLM実行へ渡し、重大な欠陥をどこまで見つけられるか比較しました。
最終的な仕様判定はFAIL / NOT READYです。Major Findingは4件ありましたが、根拠と重大度を含めて正しく不合格へ到達したレビューは16件中8件でした。
2. Round 2の実行環境
| 環境 | 実行したモデル |
|---|---|
| Browser | ChatGPT 5.6 Sol High/XHigh/Middle/Fast、Luna XHigh、Gemini 3.6 Flash/Pro/Thinking、Claude Sonnet 5 High(browser) |
| Cursor | Gork 4.5 High Fast、Composer 2.5 Fast |
| OpenCode | Kimi K3、GLM 5.2 High、DeepSeek V4 Pro/Flash |
| Claude Desktop app | Claude Sonnet 5 High(通常) |
同じモデル名でも、実行環境やツールの違いによって結果が変わる可能性があります。本記事の点数は、モデル単体ではなく、その実行条件を含む一回の観測です。
3. 点数・速度・用途の一覧
| モデル | 点数 | 概算時間 | この実験での位置づけ |
|---|---|---|---|
| ChatGPT 5.6 Sol High | 95 | 約7分 | 最もバランスが良い。最終レビュー向け |
| ChatGPT 5.6 Sol XHigh | 92 | 約10分 | 最も網羅的。高リスク仕様向け |
| ChatGPT 5.6 Sol Middle | 91 | 約4分 | 速度と精度のバランスが良い |
| ChatGPT 5.6 Sol Fast | 90 | 約2分 | 高Precisionで高速。一次レビュー向け |
| Gork 4.5 High Fast | 88 | 約4分 | 冪等性・製品範囲の補完に有効 |
| ChatGPT 5.6 Luna XHigh | 86 | 約7分 | 冪等性・管理機能の専門補完 |
| Claude Sonnet 5 High(browser) | 77 | 約12分 | 一部のAC・error code論点に強い |
| Kimi K3 | 76 | 約18分 | 正しいFAILには到達したが時間が長い |
| Composer 2.5 Fast | 73 | 約2分 | 指摘は有用だがMajorを過小評価 |
| GLM 5.2 High | 62 | 約5分 | 部分検出にとどまりREADYを誤判定 |
| Claude Sonnet 5 High(通常) | 58 | 約12分 | browser実行とVerdictが反転 |
| DeepSeek V4 Pro | 56 | 約5分 | Precisionは改善したがRecall不足 |
| DeepSeek V4 Flash | 55 | 約7分 | 一部AC不足のみ検出 |
| Gemini 3.6 Flash | 54 | 約1分 | 最速だが主要根拠を多数見逃し |
| Gemini 3.6 Pro | 52 | 約4分 | 冪等性の一部だけを検出 |
| Gemini 3.6 Thinking | 51 | 約2分 | API設計寄りの改善へ偏った |
時間は手元で測った概算です。APIの純粋な推論時間ではなく、画面操作、資料読込み、ツール処理、回答表示を含む場合があります。厳密な速度ランキングではありません。
4. 重要な発見
上位モデルでも全部は見つからない
今回の最上位モデルでも、Gold Findingをすべて検出していません。特に「解約後に許可する操作は2種類だけ」という限定は、16件中14件が見逃しました。
速さと精度は単純比例しない
Sol Fastは約2分で90点でした。一方、約1分のGemini Flashは54点、約18分のKimi K3は76点です。長時間実行やThinking設定だけで品質が保証されるわけではありません。
同じモデルでも結論が変わる
Claude Sonnet 5 Highは、Browserでは77点・NOT READY、Desktop appでは58点・READYでした。どちらも約12分です。モデル名だけでは再現性を保証できません。
多数決も安全ではない
重大な欠陥を14件が見逃した例がありました。多数派が正しいとは限りません。重要なのは票数ではなく、正本に照らした根拠です。
5. 実務で推奨する構成
日常的な一次レビュー
Sol FastまたはSol Middleを使います。短時間で高いPrecisionが得られ、明らかな不備を早期に絞り込めます。
高リスク仕様の最終レビュー
Sol HighまたはSol XHighを追加します。別文書をまたぐ制約、限定語、製品範囲など、横断推論が必要な論点を確認します。
専門論点の補完
GorkまたはLuna XHighで、冪等性、競合後再試行、利用者管理、役割権限などを確認します。
最終審理
複数モデルの指摘をそのまま足し合わせず、同じ根本原因を統合します。正本の該当箇所、重大度、修正方針、最終Verdictの整合を人間または独立Agentが確認します。
6. 最終結論
LLMレビューは有用ですが、1モデルの1回の回答を承認ゲートにしてはいけません。
実務上の基本形は、高速な一次レビュー、高精度モデルによる再確認、専門モデルによる補完、根本原因単位の最終審理です。
モデルの点数だけでなく、実行環境、所要時間、見逃した論点、誤検知、Verdictの整合まで記録することで、LLMレビューを再現可能な品質保証プロセスへ近づけられます。